6面産業 ニュース解説
政府、ラピダスに1500億円追加出資 国の出資は累計2500億円
政府は2026年6月5日、情報処理推進機構(IPA)を通じて半導体メーカーRapidus(ラピダス)に1,500億円を追加出資した。議決権のない株で国の議決権比率を11.5%に保つ設計で、2027年度予算の概算要求では3回目の出資も求める方針だ。
政府は2026年6月5日、情報処理推進機構(IPA)を通じて、先端半導体の国産化をめざすRapidus(ラピダス)に1,500億円を追加出資した。2026年2月27日に公表した1,000億円に続く2回目の出資で、国の出資額は計算上、累計2,500億円になる。8月21日には、経済産業省が2027年度予算の概算要求でさらに1,500億円の出資を求める方針だとNHKが報じた。
- 政府は6月5日、IPAを通じてラピダスに1,500億円を追加出資した。新たに引き受けた株に議決権はなく、国の議決権比率は11.5%のままである。
- 業績が悪化した場合は、議決権のある株に転換して比率を約6割に高められる。補助金とは異なり、国が株主として事業の成否を負う形だ。
- 経産省は2027年度の概算要求で3回目の出資を求める方針で、実現すれば国の出資は累計4,000億円になる。
何が起きたか:IPA経由で1,500億円を追加出資
ラピダスの発表によると、出資は「情報処理の促進に関する法律」に基づくもので、IPAを通じて行われた。ラピダスは2027年に、2ナノメートル(nm)世代のロジック半導体の量産を予定している。民間の投資家や金融機関からの資金調達も準備していると説明した。
資本金と資本準備金の合計は、官民を合わせて2,749億5,000万円から4,249億5,000万円になった。この4,249億5,000万円は官民合計の資本であり、国の出資額ではない。
赤沢亮正経済産業相は6月5日の閣議後会見で出資を発表し、「国益のために必ず成功させないといけない」と述べた(共同通信)。資金は、2nm相当の量産設備と、1.4nm相当の研究開発に使われる。
背景:2月の1,000億円と民間32社の出資
前回の出資は、2026年2月27日に公表されたIPAの1,000億円である。同じ日に、民間32社から1,676億円を調達した。ラピダスの発表によれば、出資者にはNTT、キヤノン、ソニーグループ、ソフトバンク、日本政策投資銀行、富士通などが含まれる。
このほか経産省は2026年4月11日、2026年度の支援として最大6,315億円を承認した。EE Times Japanは、研究開発支援の累計を2兆3,540億円としている。時事通信は約2.4兆円と伝えており、集計の範囲によって数字に幅がある。
研究開発への支援が累計で2兆円を超えるなか、国が株主として資金を入れる出資が加わった形である。
影響と論点:議決権を抑えた出資の設計
共同通信によると、新たに引き受けた株には議決権がなく、国の議決権比率は11.5%のままである。業績が悪化した場合は、議決権のある株に転換でき、比率は約6割に上がる(共同通信、時事通信)。
この設計は、平時は経営を民間に委ね、経営が傾いた場合にだけ国が関与を強められる仕組みと読める。民間の出資者から見れば、国が議決権ベースで過半を握っていない間は、経営の自律性が保たれる。民間資金を呼び込む狙いと対になっているとみられる。これは編集部の読みであり、経産省やラピダスが設計の意図をそう説明したものではない。
補助金は返済を求めない資金だが、出資は株式として国の手元に残る。事業の価値が高まれば回収できる可能性があり、そうならなければ損失を国が負う。2027年の量産が前提である以上、計画どおりに進むかどうかが最大の変数になる。
金額の面でも、論点は残る。研究開発支援の累計(EE Times Japanによる2兆3,540億円)は、官民合計の資本4,249億5,000万円の約5.5倍にあたる(本稿の計算)。算出の基準が異なる数字どうしの比較であり、目安にとどまる。
一方で、産業政策としての国の関わりを広く見れば、手法は一つではない。3月末の環境性能割の廃止のように、税制で需要側を動かした例もある。新車販売の上期統計を読んだ記事で、その効果を整理している。ラピダスのように特定の企業に資金を入れる手法とは、国のリスクの負い方が大きく異なる。
今後の注目点:3回目の要求と2027年の量産
NHKは8月21日、経産省が2027年度予算の概算要求で、ラピダスへの出資としてさらに1,500億円を求める方針を決めたと報じた。実現すれば3回目で、国の出資は累計4,000億円になる。概算要求は要求の段階であり、政府の予算案が固まるのは例年、年末に近い時期である。金額が認められるかどうかは、現時点では分からない。
確認したい点は三つある。一つは、2027年の2nm量産の計画が維持されるかどうか。二つ目は、ラピダスが準備している民間投資家や金融機関からの調達が、どの規模で実現するか。三つ目は、業績が悪化した場合の議決権転換という条件が、今後の出資でも維持されるかどうかである。
半導体関連の生産の動きは、経産省の鉱工業指数に含まれる電子部品・デバイス工業などの業種で、毎月確認できる。見方の基礎は、鉱工業指数の読み方を解説した記事で扱っている。
出典
- Rapidusに対して、政府が情報処理の促進に関する法律に基づき1,500億円を追加出資(Rapidus、2026年6月5日)
- ラピダスに1500億円(共同通信配信記事の転載)(共同通信、2026年6月5日)
- Japan Govt Invests More in Chipmaker Rapidus(時事通信、2026年6月5日)
- Rapidus、政府から1500億円追加出資(EE Times Japan、2026年6月5日)
- 経産省 ラピダス出資に1500億円要求へ(NHK、2026年8月21日)
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