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2面ビジネス 解説

最低賃金はどう決まるのか 目安・ランク・地方審議会の流れ

最低賃金には地域別と特定(産業別)の2種類がある。中央最低賃金審議会の目安、A・B・Cのランク、地方審議会の答申、異議申出から発効までの流れと、企業が確認する点を整理する。

ジャパンマーケットニュース編集部 公開 7分で読めます
写真はイメージです(Unsplash)

毎年7月末から8月にかけて、最低賃金の「目安」が報じられ、秋には全国の改定額が出そろう。ニュースでは全国平均の金額が目立つが、実際に企業が守る金額は、事業場がある都道府県ごとに決まる。この記事では、金額が決まるまでの手順と、対象になる賃金の範囲を、2026年度の実例で整理する。

要点
  • 最低賃金には、都道府県ごとの地域別最低賃金と、特定の産業に適用される特定(産業別)最低賃金がある。両方が当てはまる場合は、高い方の額以上を支払う。
  • 地域別は、中央最低賃金審議会が示す目安を参考に、各都道府県の地方最低賃金審議会が審議する。答申のあと、異議申出の手続きと労働局長の決定を経て発効する。
  • 比較の対象になるのは毎月支払われる基本的な賃金だけで、賞与や残業代などは除く。月給制は時間額に換算して比べる。

最低賃金は2種類ある 地域別と特定(産業別)

最低賃金制度は、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低額を定め、使用者がその額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度である。厚生労働省の最低賃金特設サイトによると、種類は二つに分かれる。

種類適用の範囲決め方
地域別最低賃金都道府県ごとに1件ずつ(全47件)。産業や職種を問わず、その県内の事業場で働くすべての労働者と使用者に適用最低賃金審議会が審議して決定
特定(産業別)最低賃金特定の産業ごと。関係労使が、地域別より高い水準が必要と認めた産業が対象関係労使の申出に基づき、審議会が必要と認めた場合に審議して決定

両方の最低賃金が同時に当てはまる労働者には、高い方の額が基準になる。たとえば、ある県の地域別が1,100円、その県の特定最低賃金が1,150円(いずれも仮の数字)なら、使用者は1,150円以上を支払わなければならない。地域別最低賃金だけを確認して済ませると、特定最低賃金の対象産業では、知らないうちに下回るおそれがある。

パートやアルバイトなど、雇用形態は関係ない。派遣労働者の場合は、派遣元ではなく派遣先の事業場に適用される最低賃金が基準になる。使用者には、最低賃金を労働者に周知する義務もある。

金額が決まるまでの流れ 2026年度の実例

地域別最低賃金の改定は、次の順で進む。2026年度の日付を当てはめると、全体像がつかみやすい。

段階内容2026年度
1. 目安の提示中央最低賃金審議会が、地方に引き上げ額の目安を示す7月28日
2. 地方での審議・答申各都道府県の地方最低賃金審議会が、目安を参考に地域の実情を踏まえて審議し、答申する9月3日に47都道府県そろって答申
3. 異議申出の手続き関係労使が異議を申し出られる。都道府県労働局で手続きを行う答申後
4. 労働局長の決定・発効都道府県労働局長が決定し、順次発効する10月1日〜12月2日

審議会は、公益代表、労働者代表、使用者代表の同数の委員で構成される。審議では、賃金の実態調査の結果などの統計を参考にする。地方審議会が改定額を考えるときの基準は、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力の3点で、総合的に勘案するとされている。生計費の検討では、「健康的で文化的な最低限度の生活」を営めるよう、生活保護に関する施策との整合性にも配慮する。

中央が目安を示すのは、全国的な整合性を図るためである。47都道府県が別々の基準で金額を出せば、隣接する県の間で水準が大きくずれるおそれがある。目安は、その調整の役割を果たす。

ランクと目安の意味 A・B・Cの分け方

目安は、都道府県をA・B・Cの3つのランクに分けたうえで、ランクごとに示される。2026年度の目安は、Aランク(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪)が54円、BランクとCランクが56円の引き上げだった。最高額の東京都を含むAランクより、B・Cランクの引き上げ幅を大きくする設計で、目安のとおりなら全国加重平均は1,176円になる計算だった。

では、目安は各県の答申を縛るのか。2026年度の結果を見ると、そうとは限らない。目安と同額の県は14、目安を上回った県は33府県で、最も大きい佐賀県の65円は目安より9円多かった。地方審議会は、目安を参考にしつつ地域の実情で判断する立場にあり、答申の金額は審議会ごとに決まる。その結果、全国加重平均は目安の想定より1円高い1,177円になった。結果の詳細は2026年度の最低賃金改定を扱った記事で整理している。

対象になる賃金 残業代や賞与は含まない

最低賃金と比べるのは、毎月支払われる基本的な賃金である。厚労省の特設サイトは、実際に支払われた賃金から、次の6項目を除いた残りが比較の対象になると説明している。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

この6項目に当たらない賃金は、比較の計算に含まれる。日給、週給、月給制の場合は、対象となる賃金額を時間額に換算し、適用される最低賃金額と比べる。たとえば、月給から除外項目を引いた額が19万円、1カ月の所定労働時間が160時間なら、時間額は約1,188円になる(仮の条件)。この金額は、宮崎県の改定額(1,085円)より高く、東京都の改定額(1,280円)より低い。同じ給与設定でも、事業場が東京にあれば下回る。

ここで落とし穴になるのは、手当を足して「最低賃金を超えている」と判断してしまうことだ。通勤手当や家族手当を含めて計算すると、実際には除外項目の分だけ見かけの時給が高くなる。除外項目を引いたうえで比べる必要がある。

企業が確認すること 違反した場合の扱い

実務で確認することは、大きく四つある。(1)事業場が所在する県の最新の改定額と発効日、(2)特定最低賃金の対象産業かどうか、(3)除外項目を引いたうえでの時間額、(4)最低賃金の周知である。改定額は発効の日から適用されるため、発効日の前は従来の額が、発効日以降は新しい額が基準になる。各県の金額と発効日は、厚労省の「地域別最低賃金の全国一覧」で確認できる。

最低賃金を下回る賃金を定めた契約は、その部分が法律により無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされる。使用者は差額を支払う必要がある。地域別最低賃金額以上を支払わない場合は、最低賃金法に基づき50万円以下の罰金が定められている。特定最低賃金の場合は、労働基準法に基づく30万円以下の罰金である。

もっとも、制度が決めるのは下限だけである。最低賃金を守ることは出発点にすぎず、それを上回る水準にするかどうかは各社の判断である。宿泊や小売のように人手に頼る業種では、訪日客の増減による需要の振れも、賃金を決める際の経営の条件になる。需要側の動きは8月の訪日客数を扱った記事で整理した。

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