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2面ビジネス ニュース解説

最低賃金、全国平均1177円に 10月1日から順次発効

2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円となり、56円引き上げられる。33府県が目安を上回った。10月1日から12月2日まで順次発効する。

ジャパンマーケットニュース編集部 公開 出来事の日付 7分で読めます
写真はイメージです(Unsplash)

厚生労働省は2026年9月3日、すべての都道府県で2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金の改定額が答申されたと発表した。全国加重平均は1,177円で、前年度の1,121円から56円上がる。改定額は10月1日から12月2日にかけて、都道府県ごとに順次発効する。

要点
  • 2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円(前年度1,121円)。56円の引き上げは、目安制度が始まった1978年度以降で2番目の大きさにあたる。
  • 中央最低賃金審議会の目安を33府県が上回り、目安と同額は14県。最高額は東京都の1,280円、最低額は宮崎県の1,085円で、最低額は最高額の84.8%に達した。
  • 発効は10月1日から12月2日まで。事業者は自社の事業場がある県の発効日と、最低賃金の対象になる賃金の範囲を確認する必要がある。

何が起きたか 全47都道府県で54〜65円の引き上げ

厚労省の発表によると、引き上げ幅は全47都道府県で54円から65円の範囲に収まった。全国加重平均の1,177円は前年度から56円の増加で、労働新聞は引き上げ率を5.0%と報じている。厚労省の9月3日のページには率の記載がない。前年度の引き上げは66円(6.3%)だった。

項目2026年度の内容
全国加重平均1,177円(前年度1,121円、56円増)
引き上げ幅54〜65円(全47都道府県)
最高額1,280円(東京都)
最低額1,085円(宮崎県)
最低額が最高額に占める比率84.8%(前年度83.4%)、12年連続で改善
目安との比較同額14県、上回ったのは33府県
最大の引き上げ佐賀県の65円(目安より9円多い)
発効時期2026年10月1日〜12月2日(37都道府県が10月に発効)

引き上げ幅別の県数を見ると、56円が11道県で最も多く、57円が7県、59円が5県で続く。54円は3都府県、65円は佐賀県の1県だけである。56円以下は合計17都道府県で、残る30都道府県は57円以上の引き上げになった(編集部の集計)。

数字の読み違いに注意したい。

7月28日に示された目安を全県にそのまま当てはめた場合、全国加重平均は1,176円(55円、4.9%増)になる計算だった。9月3日の答申の結果は、これを1円上回る1,177円で決着した。「1,176円」は目安を前提にした値、「1,177円」は各県の答申が積み上がった実績値である。

背景 目安を出発点に、各県が上乗せを審議する

地域別最低賃金は、まず中央最低賃金審議会が毎年、引き上げ額の目安を地方に示す。厚労省の最低賃金特設サイトによると、全国的な整合性を図るための仕組みである。各都道府県の地方最低賃金審議会は、この目安を参考にしつつ、地域の実情に応じて改定額を審議する。決定の基準は、労働者の生計費、労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力の3点を総合的に勘案することとされている。仕組みの基礎は、最低賃金の決まり方を整理した解説記事で扱っている。

審議会は、公益代表、労働者代表、使用者代表の同数の委員で構成され、賃金の実態調査などの統計を参考に議論する。つまり、引き上げ額は労使と有識者の協議の結果であり、政府が一方的に決める額ではない。

2026年度の目安は7月28日に示された。

埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪のAランクが54円、B・Cランクが56円である。賃金水準の高い地域よりも低い地域に大きな上げ幅を割り当てており、目安の段階から地域間の差を縮める設計になっている。最低額が最高額の84.8%まで上がり、この比率が12年連続で改善したのは、この設計と各県の上乗せの結果といえる。

影響と論点 目安超えの広がりと、企業の負担

今年の特徴は、目安を上回る県の多さである。47都道府県のうち33府県が目安を超え、14県が同額だった。最も上げ幅が大きい佐賀県は65円で、目安より9円多い。労働政策研究・研修機構の『ビジネス・レーバー・トレンド』は、この内訳を整理している。なぜ各県が目安を超えたのか、個別の審議経過までは、本稿で参照した公表資料からは確認できなかった。

最高額の東京都(1,280円)と最低額の宮崎県(1,085円)の差は195円である(編集部の計算)。比率は改善したが、時給の絶対額の差は依然として大きい。

企業側の負担を、仮の条件で試算してみる。年間の所定労働時間が2,000時間のフルタイム労働者1人の時給が56円上がると、賃金の増加分は年間11万2,000円になる(56円×2,000時間。社会保険料の事業主負担などは含まない)。従業員の多い飲食・小売・宿泊では、この積み上げが人件費全体に響く。宿泊や小売は、訪日客の増減が売上を左右する業種でもある。需要側の動きは8月の訪日客数を扱った記事で整理した。

月給制の従業員でも、確認の方法は同じである。月給から最低賃金の対象にならない手当を除き、1カ月あたりの所定労働時間で割って時間額に直し、事業場のある県の最低賃金と比べる。たとえば、通勤手当を除いた月給が19万円、月の所定労働時間が160時間なら、時間額は約1,188円になる(仮の条件)。この水準は、最低額の宮崎県(1,085円)なら上回るが、最高額の東京都(1,280円)なら下回る。基本給を据え置いてきた事業者ほど、改定額との差を早めに確かめる意味がある。

ただし、負担の大きさは企業ごとに違う。

決定基準に「通常の事業の賃金支払能力」が含まれるように、支払う側の体力は制度上も考慮される要素である。中小企業が人件費の上昇分を価格に転嫁できているかを示す数字は、今回参照した公表資料には含まれていない。引き上げ額の大きさだけで、個々の事業者への影響は判断できない。

一方、働く側から見ると、最低賃金の対象になるのは毎月支払われる基本的な賃金に限られる。賞与や残業代は対象外で、改定が手取りにどう反映されるかは、雇用形態や手当の構成によって異なる。

今後の注目点 発効日は県ごとに異なる

答申された改定額は、都道府県労働局で関係労使からの異議申出の手続きを経たうえで決定される。発効は2026年10月1日から12月2日までの間で、県によって日付が異なる。10月に発効するのは37都道府県で、残る10都道府県は11月以降になる。

事業者が確認することは3点ある。(1)事業場が所在する県の改定額と発効日、(2)特定(産業別)最低賃金が適用される場合は、地域別との高い方、(3)月給制の場合は、最低賃金の対象にならない手当を除いた額を時間額に換算した水準である。各県の改定額と発効日は、厚労省の「地域別最低賃金の全国一覧」で確認できる。

特定(産業別)最低賃金が定められている産業では、地域別との関係にも注意がいる。両方が同時に適用される労働者には、高い方の額以上を支払わなければならない。特定最低賃金は関係労使の申出に基づいて審議会が必要と認めた場合に決まる別の手続きで、地域別の改定とは日程も金額も別に動く。地域別の改定額だけを見て安心せず、自社の産業に特定最低賃金があるかどうかも調べておきたい。

確認を怠った場合の影響は小さくない。

厚労省の特設サイトによると、最低賃金を下回る賃金の契約はその部分が無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされる。使用者は差額を支払わなければならない。地域別最低賃金額以上を支払わない場合には、最低賃金法に50万円以下の罰金が定められている。パートやアルバイトを含め、雇用形態に関係なくすべての労働者が適用の対象であり、使用者には最低賃金を労働者に周知する義務もある。

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