3面マーケット 解説
TOPIXと日経平均はどう違う 計算方法と使い分け
日経平均は225銘柄の株価を平均する株価平均型、TOPIXは浮動株時価総額で加重する指数だ。計算方法、値がさ株の影響、入れ替えの仕組み、使い分けを仮の数字で整理する。
株価に関するニュースでは、日経平均とTOPIX(東証株価指数)が並んで出てくる。どちらも日本の株式市場全体の動きを表す指数とされるが、計算の仕方は異なる。同じ日に一方が上がり、もう一方が下がることがあるのは、そのためである。この記事では、二つの指数の違いを、計算方法、個別銘柄の影響、入れ替えの仕組みの順に整理する。
- 日経平均は、東京証券取引所プライム市場の銘柄から選んだ225銘柄の株価で算出する「株価平均型」。TOPIXは「浮動株時価総額加重型」で、企業の市場での大きさに応じて影響が決まる。
- 株価の絶対額が高い銘柄は日経平均に、浮動株時価総額が大きい銘柄はTOPIXに強く効く。両者の水準(ポイント)は、基準が異なるため単純に比べられない。
- 日経平均の入れ替えは年2回(4月初・10月初)。TOPIXは、2026年10月30日に全市場区分を母集団とする初回の定期入替が予定されている。
計算方法 株価の平均か、時価総額の加重か
日経平均株価は、東京証券取引所プライム市場の銘柄から選んだ225銘柄の株価を使う。日本経済新聞社の「日経平均プロフィル」によると、算出は株価平均型と呼ばれる方式である。構成銘柄の株価に株価換算係数を掛けた採用株価を合計し、「除数」で割る。除数は、株式分割や銘柄の入れ替えがあっても指数が不連続にならないよう、そのつど調整される数値である。5秒間隔で算出され、公表の開始は1950年9月7日にさかのぼる。
除数の役割は、銘柄の入れ替えで考えるとわかりやすい。株価の高い銘柄を株価の低い銘柄に入れ替えると、構成銘柄の株価の合計だけが下がり、市場が動いていなくても指数が下がってしまう。それを防ぐため、入れ替えの前後で指数の値が変わらないように除数を修正する。株式分割や併合、有償増資のときも同じ考え方で調整する。指数の水準そのものを「連続した時系列」として保つための仕組みである。
TOPIXは、浮動株時価総額加重型の指数である。時価総額は、株価に発行済株式数を掛けた値で、企業の市場での大きさを表す。「浮動株」は、支配株主などが持つ分を除いた、市場で売買されうる株式を指す。TOPIXは、この浮動株ベースの時価総額を基準時点と比べて指数化する。日本取引所グループ(JPX)によると、算出の開始日は1969年7月1日、起算日は1968年1月4日で、その日の基準値を100ポイントとしている。
歴史の長さも異なる。日経平均の公表開始(1950年9月7日)は、TOPIXの算出開始(1969年7月1日)より約19年早い(編集部の計算)。長期の推移を並べて論じるときは、それぞれの起点と基準が違うことに留意が要る。
計算の基準が違うため、二つの指数の水準を直接比べることには意味がない。日経平均は円建ての株価の平均、TOPIXは基準日を100とした相対値で、単位の性質が異なる。ニュースで確認するときは、ポイントの絶対値よりも、前日比の騰落率で見るのが実用的である。
値がさ株の影響 仮の数字で試す
計算方法の違いが最も表れるのは、個別銘柄の影響の出方である。実在の企業ではなく、仮の2銘柄で試してみる。なお実際の日経平均は株価換算係数を使うが、ここでは単純化のために1として扱う。
| 銘柄A | 銘柄B | |
|---|---|---|
| 株価 | 20,000円 | 2,000円 |
| 浮動株数 | 100万株 | 1億株 |
| 浮動株時価総額 | 200億円 | 2,000億円 |
| 株価が1%上がったときの日経平均への寄与(採用株価の増加分) | 200円分 | 20円分 |
| 株価が1%上がったときのTOPIXへの寄与(浮動株時価総額の増加分) | 2億円分 | 20億円分 |
銘柄Aは、株価は高いが会社の市場での規模は小さい。銘柄Bは、株価は低いが規模は10倍ある。同じ1%の上昇でも、日経平均ではAがBの10倍の影響を持ち、TOPIXでは逆にBがAの10倍の影響を持つ。株価の絶対額が高い銘柄は「値がさ株」と呼ばれ、日経平均の動きを左右しやすい。一方、TOPIXは規模の大きな企業の動きを反映する。
ここから、ニュースの読み方に一つ注意が生まれる。日経平均が大きく動いた日でも、上昇や下落の理由が値がさ株の数銘柄に偏っているなら、市場全体の広がりを表しているとは限らない。TOPIXの動きとあわせて見ると、偏りに気づきやすい。
構成銘柄と入れ替え 年2回の日経平均、全市場区分に広がるTOPIX
日経平均の構成銘柄は225で、市場流動性とセクターのバランスを考慮して選ばれる。入れ替えは年2回、4月初と10月初に行われる。上場廃止などで欠員が出れば補充し、225銘柄を保つ。構成銘柄が少ないため、1銘柄の影響は相対的に大きい。
TOPIXの構成は、いま大きな転換点にある。東京証券取引所の市場区分は、プライム、スタンダード、グロースの3つである。JPXの資料によると、次期TOPIXでは全市場区分を母集団とし、年間売買代金回転率と浮動株時価総額の累積比率で、流動性にもとづく定期入替を行う。初回は2026年10月、2回目は2028年10月で、2026年10月30日に初回の定期入替が予定されている。日経平均がプライム市場の銘柄から選ぶのに対し、次期TOPIXは市場区分をまたいで銘柄を選ぶ点が異なる。
入れ替えの頻度も異なる。日経平均は毎年2回、銘柄を見直す。TOPIXは、定期入替の間隔が2年に1回の設計になっている。構成を見直す頻度が、二つの指数では異なる。
母集団の広さにも注目したい。次期TOPIXでは、スタンダードやグロースの銘柄であっても、流動性の基準を満たせば採用の対象になりうる。市場区分にかかわらず「売買が活発で規模が一定以上」という実績で選ばれるため、指数が映す企業の範囲は、プライム市場に限る場合より広くなる。
使い分け 何を見たいかで選ぶ
二つの指数に優劣はない。見たいものが違う。日経平均は長い歴史があり、5秒ごとに算出されるため、日々の市場の雰囲気をつかむ速報性に優れる。TOPIXは、市場の規模を加味するため、上場企業全体の時価総額の動きに近い。ETFや投資信託には、どちらかの指数への連動を目標にする商品があり、運用会社や資産の種類によってベンチマークは異なる。
ただし、一つの指数だけを見て市場全体を語ることには限界がある。日経平均は225銘柄の動きにすぎず、TOPIXは規模の大きな銘柄の影響が強い。二つの指数が異なる方向に動く日は、どの銘柄群が動いたのかを確認する手がかりになる。
読むときの三つの確認点
一つ目は、比べるのは水準ではなく騰落率だという点である。日経平均とTOPIXの値は、計算の基準が違うため、数字の大小を比べても意味がない。前日比の変化率で並べると、その日の相対的な強弱が見える。
二つ目は、いつの値かを確かめることだ。日経平均は5秒間隔で算出されるため、取引時間中の値は刻々と変わる。記事で引用された数字が、取引時間中の値なのか、終値なのかによって意味が変わる。本稿では、過去の特定日の値は示していない。値を引用する際は、日付と出所をそろえて確認してほしい。
三つ目は、動きの偏りを探ることである。前述のとおり、日経平均は値がさ株、TOPIXは規模の大きい企業の影響を受ける。二つの指数の動きが食い違う日は、動いた銘柄の顔ぶれが偏っている手がかりになる。ただし、食い違いの原因は日によって異なり、指数の仕組みだけでは説明できない場合もある。
指数は、個別企業の業績や市場環境の積み重ねで動く。企業の決算はトヨタ自動車の4〜6月期決算を扱った記事が実例になる。債券市場の指標である長期金利の動きは、長期金利が約30年ぶりに3%台になった記事で整理した。株価指数を、金利や企業業績のニュースと並べて読むと、数字の意味がつかみやすい。
出典
- TOPIX(東証株価指数、TPX)(日本取引所グループ)
- 日経平均株価 指数情報(日本経済新聞社「日経平均プロフィル」)
- 日経平均株価 算出要領(日本経済新聞社)
- TOPIXの見直し:第2段階の見直し(日本取引所グループ)
- 市場概要(内国株)(日本取引所グループ)
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
記事の内容に誤りを見つけた場合は、お問い合わせからお知らせください。訂正の方針は編集方針に記載しています。