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5面経済 解説

日銀短観とは 業況判断DIの読み方と注目点

日銀短観の仕組みを基礎から説明する。調査の対象と頻度、業況判断DIの計算方法、企業規模の区分、設備投資計画や物価見通しなど市場が見る項目、GDP統計との違いを、2026年6月調査の数字を例に整理する。

ジャパンマーケットニュース編集部 公開 6分で読めます
写真はイメージです(Unsplash)

2026年7月1日に公表された日銀短観(6月調査)では、大企業製造業の業況判断DIが+22、大企業非製造業が+37だった。ニュースで毎回報じられるこの数字は、どう計算され、何を表しているのか。次の9月調査は10月1日に公表される。その前に、短観の読み方を整理する。

要点
  • 短観(全国企業短期経済観測調査)は、日銀が年4回公表する企業アンケートで、約9,200社が対象。データは1974年5月からある。
  • 業況判断DIは「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値で、景気の成長率ではない。企業規模は資本金で分ける。
  • DIのほかに、設備投資計画、想定為替レート、物価見通しなどが注目される。GDPとは調査の性格が異なる。

短観とは何か:調査の骨格

短観は、日本銀行の調査統計局が四半期ごとに作る統計である。公表は4月初、7月初、10月初、12月中旬で、データは1974年5月からある。結果は公表日の午前8時50分に出る。日本の金融資本市場の取引が活発になる午前9時より前に公表するためと、日銀は説明している。

調査の対象は、資本金2,000万円以上の民間企業(金融機関、経営コンサルタント業、純粋持株会社を除く)で、母集団は約22万社。そこから抽出した約9,200社(2026年3月時点)に質問票を送る。つまり全企業を調べる全数調査ではなく、標本調査だ。日銀は抽出率に応じて回答を膨らませ、母集団の推計値を出している。2026年6月調査の対象は9,141社で、回答率は99.4%だった。

業況判断DIの計算と読み方

業況判断DIの質問には、「良い」「さほど良くない」「悪い」の3つの選択肢がある。DIは「良い」の回答社数構成比(%)から、「悪い」の構成比(%)を引いた値だ。日銀の例では、「良い」が30%、「悪い」が10%ならDIは20(%ポイント)になる。企業規模によるウェイト付けはせず、1社1票の単純な集計である。

6月調査の大企業製造業を例にすると、DIは+22。「良い」が「悪い」を22ポイント上回ったという意味で、景気が22%成長しているということではない。DIには「最近」と「先行き」がある。「最近」は回答時点の業況、「先行き」は3か月後の業況の見通しだ。6月調査の先行きは、大企業製造業が+17、大企業非製造業が+28で、9月に向けて下がると見ていた。

先行きの数字は、企業が置く前提を映した見通しである。予測として読みすぎず、次の調査で実績とのずれを確かめるのが基本だ。6月調査の先行きは大企業製造業で+17だった。この数字と、10月1日に出る9月調査の実績がどれだけ違うかが、次の確認点になる。

見るときの要点は、水準よりも方向と変化幅である。前回調査からの上下、そして先行きとのずれを追う。ただし、DIは「良い」と「悪い」の企業の数の差を示すだけで、どの程度良いかは測れない。各区分の構成比は整数に丸めているため、区分間でわずかな差が出ることもある。標本調査である以上、1〜2ポイント程度の小さな動きは、誤差を含みうる。

ニュースの一文を読むときは、次の4点を確認するとよい。

  1. どの区分か(大企業か中堅・中小か、製造業か非製造業か)。
  2. 「最近」の数字か、「先行き」の数字か。
  3. 前回調査から何ポイント動いたか。
  4. 設備投資などの計画値は、どの基準・どの調査時点の数字か。

企業規模と業種の区分

企業規模は、従業員数ではなく資本金で分ける。大企業は資本金10億円以上、中堅企業は1億円以上10億円未満、中小企業は2,000万円以上1億円未満である。これに製造業と非製造業の区分を組み合わせ、「大企業製造業」「中小企業非製造業」といった区分でDIを公表する。資本金が基準なので、売上や従業員の規模が小さくても、資本金が10億円以上なら大企業の区分に入る。

6月調査の製造業のDI(最近)は、大企業が+22、中堅企業が+17、中小企業が+9で、規模が小さいほど低い。非製造業も、大企業+37、中堅企業+26、中小企業+15と、同じ順に低くなる。

短観の「中小企業」は、この調査独自の区分だ。法令上の中小企業の定義とは別物で、資本金2,000万円未満の企業は対象に入らない。報道で「大企業」「中小企業」と出てきたときは、短観の基準なのかを確認する必要がある。

DI以外に市場が見る項目

DIと並んで注目されるのが、企業の計画や見通しを聞く項目である。

  • 設備投資計画:年度ごとの前年度比で示される。6月調査では、2026年度の全規模・全産業が前年度比6.8%増、大企業・全産業が11.5%増だった。ただしこの数字は、土地投資額を含み、ソフトウェア・研究開発の投資額を含まない基準だ。含む・含まないで数字が変わるため、引用では基準を確認する。
  • 想定為替レート:企業が年度の収益計画に置く為替の前提。
  • 企業の物価見通し:1年後、3年後、5年後の物価についての企業の見方。
  • 雇用人員判断DI:「過剰」と答えた企業の割合から「不足」の割合を引いた値で、マイナスが人手不足超を表す。

計画の数字は、調査のたびに改定される。6月調査の要旨には、前回調査からの修正率が載っている。同じ「2026年度の設備投資」でも、どの調査時点の数字かで値が違うため、時点を添えて読む必要がある。

これらは、日銀が経済・物価の判断に使う材料の一つとして注目される。10月1日の9月調査は、9月18日の決定会合(政策金利を1.25%程度に引き上げ)と、次回の10月29〜30日の会合の間に公表される。9月の決定は日銀の9月利上げを扱った記事で整理した。

GDP統計との違い

短観とGDPは、景気をみる点では同じでも、中身が異なる。短観は企業に判断や計画を聞くアンケートで、「良い」「悪い」という心理に近い指標だ。GDPは内閣府が算出する、生産や支出の金額を集計した統計である。

短観の強みは、1974年5月からの長い時系列があることだ。過去の局面と今回の数字を、同じ物差しで比べられる。ただし調査の方法は見直されることがあり、長期の比較では、日銀が発行する解説資料(2026年4月発行)で変更点を確認する必要がある。

公表の順序にも違いがある。6月調査の短観は7月1日に出たが、同じ4〜6月期のGDPは、1次速報が8月17日、2次速報が9月8日に公表された。短観は早く出るぶん、実績の確定値ではなく企業の見方を映す。

設備投資も、両者で性格が違う。短観の設備投資は企業の年度計画で、GDPの設備投資は実績に近い統計だ。4〜6月期の2次速報では、財務省の法人企業統計を反映して設備投資が改定された。この経緯は4〜6月期GDP2次速報の解説にまとめた。9月調査の結果は、9月短観の結果を整理した記事で扱っている。

出典

  1. 「全国企業短期経済観測調査」の解説(日本銀行調査統計局、2026年4月発行)
  2. 短観のFAQ(日本銀行、調査対象数は2026年3月時点)
  3. 短観(2026年6月調査)要旨(日本銀行、2026年7月1日)
  4. 短観(全国企業短期経済観測調査)(日本銀行、公開ページ)
  5. 2026年4-6月期GDP速報(2次速報値)ポイント解説(内閣府経済社会総合研究所、2026年9月8日)
  6. 4~6月のGDP年率1・1%増(共同通信、2026年8月17日)

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