5面経済 ニュース解説
9月短観、大企業製造業は6期連続改善 先行きは悪化
日銀の9月短観で、大企業製造業の業況判断DIは+24と6月から2ポイント改善した。大企業非製造業は+35で2ポイント悪化。先行きは両方とも下がる。設備投資計画、為替の想定、物価見通しを整理する。
日本銀行は2026年10月1日、全国企業短期経済観測調査(短観)の9月調査を公表した。企業の景況感を示す大企業製造業の業況判断DI(「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値)は+24で、6月調査から2ポイント改善した。大企業非製造業は+35と2ポイント悪化した。3か月後の先行きは、製造業が+21、非製造業が+30と、どちらも下がる見通しである。
- 大企業製造業は+24(6月調査比+2)、大企業非製造業は+35(同−2)。共同通信は、大企業製造業の改善を6期連続と報じた。
- 先行き(12月)は大企業製造業+21、非製造業+30。2026年度の設備投資計画は、全規模・全産業で前年度比7.6%増(土地投資額を含む)。
- 企業の物価見通しは、1年後2.6%、3年後2.6%、5年後2.5%。次の日銀会合は10月29〜30日である。
製造業は改善、非製造業は悪化:9月調査の数字
調査期間は2026年8月26日から9月30日、対象は9,104社(製造業3,776社、非製造業5,328社)で、回答率は99.4%だった。規模別の対象は、大企業1,631社、中堅企業2,589社、中小企業4,884社である。業況判断DI(最近)は次のとおり。符号は+が「良い」超、−が「悪い」超を表す。
| 区分 | 最近(9月調査) | 6月調査からの変化 | 先行き(12月) |
|---|---|---|---|
| 大企業・製造業 | +24 | +2 | +21 |
| 大企業・非製造業 | +35 | −2 | +30 |
| 中堅企業・製造業 | +23 | +6 | +18 |
| 中堅企業・非製造業 | +24 | −2 | +19 |
| 中小企業・製造業 | +14 | +5 | +12 |
| 中小企業・非製造業 | +15 | 0 | +10 |
水準で見ると、非製造業のほうが高い。大企業では非製造業が+35、製造業が+24で、悪化したとはいえ非製造業のDIは製造業を11ポイント上回る。中堅企業は+24と+23、中小企業は+15と+14で、ほぼ同水準である(差は計算値)。
回答期間は、日銀が政策金利の引き上げを決めた9月18日の決定会合をまたぐ。回答の時点が一律ではないため、利上げが回答にどこまで反映されたかは、この調査だけでは判別しにくい。
大企業製造業の改善幅(+2)より、中堅(+6)と中小(+5)の製造業の改善幅のほうが大きい。大和総研によると、事前の予想は大企業製造業で+25で、実績は1ポイント下回った。
先行きは全区分で下がる。「最近」から「先行き」への下げ幅は、大企業製造業が3ポイント、中堅製造業が5ポイント、中小製造業が2ポイントで、非製造業は大企業・中堅・中小とも5ポイントだった(本稿の計算値)。非製造業のほうが、先行きを慎重に見ている。
背景:AI・半導体需要と、燃料費・人件費の上昇
共同通信によると、大企業製造業の改善には、AI・半導体関連の需要と値上げの浸透が寄与した。一方で、中東情勢による原油高のコスト上昇が重荷になった。
非製造業の悪化について、大和総研は宿泊・飲食、小売など消費関連で燃料費と人件費の上昇が重荷になったと分析している。先行きの悪化も、原油高と金利上昇への懸念が背景だとみる。金利については、日銀が9月18日の決定会合で政策金利の誘導目標を1.25%程度に引き上げた(賛成7、反対2)。
同じコスト上昇でも、業種によって受け止め方に差が出ている。製造業では値上げの浸透が追い風として挙がり、非製造業では燃料費と人件費の上昇が重荷として挙がる。価格転嫁の進み方の違いが、DIの明暗に表れているとみられる。
人手の面では、雇用人員判断DI(「過剰」から「不足」を引いた値)が全規模で−38と、不足超が続く。6月調査は−37で、先行きは−41と不足感が強まる見通しだ。大企業は−29、中堅企業は−38、中小企業は−42で、規模が小さいほど不足感が強い。
影響と論点:利益、設備投資、物価見通し
2026年度の経常利益計画は、大企業製造業が前年度比13.6%増で、6月調査からの修正率は+21.7%だった。大企業非製造業は−4.7%の減益計画である。全規模・全産業では2.2%増(修正率+9.4%)で、中堅企業の製造業は10.6%増、中小企業は製造業が−3.6%、非製造業が−6.3%だった。収益計画の改善は、製造業に偏っている。
企業の想定為替レートは、2026年度で1ドル154.23円だった。6月調査の152.57円から円安方向に見直されている。対ユーロは177.86円で、6月調査の175.62円から同じく円安方向に動いた。
設備投資計画(土地投資額を含む)は、大企業・全産業が前年度比11.3%増、全規模・全産業が7.6%増だった。ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除く基準では、全規模・全産業で9.3%増になる。基準によって数字が違うため、引用するときは、どちらかを明記する必要がある。計画は調査のたびに改定され、6月調査の全規模・全産業は6.8%増(土地投資額を含み、ソフトウェア・研究開発を含まない基準)だった。9月調査の7.6%増は同じ基準の数字で、0.8ポイント高い(計算値)。規模別では、中小企業・全産業が−4.7%で、大企業との差は大きい。大企業は製造業が11.6%増、非製造業が11.2%増と拮抗するのに対し、中小企業は製造業が4.0%増、非製造業が−8.4%と、非製造業の落ち込みが目立つ。
物価の見通しは、6月調査と比べて横ばいか、わずかに低下した。物価全般(前年比)の見通しは、1年後が2.6%(6月調査2.7%)、3年後が2.6%(同2.6%)、5年後が2.5%(同2.6%)だった。自社の販売価格の見通し(現在比)も、1年後が3.5%で、6月調査の3.7%からやや下がった。3年後は5.1%、5年後は6.1%で、6月調査と同じである。
物価全般の見通しは、1年後から5年後まで2%台半ばに並ぶ。日銀が物価安定の目標とする2%を、どの年限でも上回っている。ただし、この見通しは企業の予想であり、実際の物価の動きや、日銀の政策判断を直接示すものではない。
ただし、先行きの数字をそのまま悪化の予告とみるのは早い。6月調査では、9月の先行きを大企業製造業+17、大企業非製造業+28と見ていたが、実績は+24と+35で、いずれも先行きを上回った。先行きの回答が慎重に出た前回の例である。もっとも、今回の先行きの下げには原油高と金利上昇が挙がっており、前回と同じ構図かどうかは、12月の調査で確かめることになる。
今後の注目点:日銀会合と12月調査
- 日銀の次回の金融政策決定会合は10月29〜30日で、10月30日に展望レポートを公表する(日銀の公表日程)。
- 短観の12月調査は、12月中旬の公表予定である。今回の先行き(大企業製造業+21、非製造業+30)が実績でどう動くかを、6月調査の例と見比べることになる。
- 人手不足と賃金:雇用人員判断DIの不足超(全規模−38、先行き−41)が続くかどうかは、企業の人件費負担を左右する材料になる。
- 7〜9月期のGDP1次速報。公表日は内閣府の四半期別GDP速報のページで確認できる。
短観の仕組みは日銀短観とは何かを説明した記事、4〜6月期の景気の実績は4〜6月期GDP2次速報の解説、9月の利上げの経緯は日銀の9月利上げを扱った記事で整理している。
出典
- 短観(2026年9月調査)要旨(日本銀行、2026年10月1日)
- 短観(2026年6月調査)要旨(日本銀行、2026年7月1日)
- 大企業の景況感、6期連続改善 9月短観、先行きは悪化(共同通信、2026年10月1日)
- 2026年9月日銀短観(大和総研、2026年10月1日)
- 金融市場調節方針の変更について(日本銀行、2026年9月18日)
- 金融政策決定会合の運営(日本銀行、公開ページ)
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